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山 の 詩


串田孫一

「山頂」

まあここへ腰をおろしましょう
疲れましたか
ここが針の木岳です
水ですか ぼくはあとで貰います
この真夏の光る天の清冽
ぼくたちはもうその中にいるのです
しいいいんとしているこの深さ
何だか懐かしいような気がしませんか
七弦琴と竪琴が奏でている
これが天体の大音楽かも知れない

今こうして連なる山並みをみていると
夢の中の憩いのようでもあるけれど
こんな山肌をみたことや
寂しい谷を霧に濡れて歩いたことが
あなたを柔らかく救う時があるでしょう
取りつきようのない寂しさの中を
蟻になった気持ちで歩いたことが
あなたを元気づけることがあるでしよう
天へ飛び立っていくような歓喜と
永遠なるものに包まれてしまった哀愁と
それが儚い人間には必要なのです
冷たい水もう一杯のみますか


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