天涯の花
キレンゲショウマ
標高1,955mの剣山(徳島)は、かって秘境の地であった。
現在は信州の乗鞍岳と同じように女性がハイヒールでも訪れることが出来る。
貞光から見の越(登山口・標高1,400m)まで50kmの林道が開通したのが1964年のことであった。そして15年前に見の越から標高1,700mの西島まで登山リフトが完成した。
ここから徒歩で四国第二の高峰も約40分で頂上に立つことが出来る。
剣山にも高山植物、花が多いところで有名であるが、宮尾登美子原作の「天涯の花」に出てくる「キレンゲショウマ」に逢いに7月末に友人と出かけた。
[時は1962年、まだ林道の開通しない秘境の地であった頃の見の越「剣神社」に孤児院から数奇な運命を持った少女が養女に来た。彼女は天涯に咲くという花を求めてお山に来たのだが、親子のふれあい、出生と孤児の秘密又花の撮影に東京からやってきた青年との運命的な出会いと愛、、、、、。]
「キレンゲショウマ」の群生で自生しているのは、ここにしかない。
この花はまたレッドブックにも載る希少品種でもある。「天涯の花」がNHKで放送されて一躍有名となったのだが剣山のどこに咲くかは明らかにされていない。変な愛好者が商売に採ってしまわないためにもそっとしておきたいものだ。
私もテレビの映像から多分あの辺に咲くのだろうと見当をつけて出かけた。同行の友人は山には私より知識が少ないので道は私にまかされた。
尾根を登り谷を下り、はたしてこんな所に咲くのだろうかと不安になりつつも険しい道を歩くこと40分、・・逢いたかった「天涯の花」がそこにあった。
テレビでは「8月上旬に咲く」とあったので、少し早いかもしれないが一輪二輪はお目にかかれると甘い期待を持っていたが、つぼみ膨らむ程度で心残りではあった。(特に今年は他の花も開花が遅い)
場所といい、雰囲気といい、花の色形といい、まさに「天涯の花」である。
「もう一度、時期を見ておいでなさいね」と言われたようであった。