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知ってトクする
 温泉だよ


しんぶん 赤旗 日曜版
(2010年11月14日号)より引用

その1

温 泉の効果には、物理的な作用、含有成分による化学的作用、温泉地の環境による作用があります。

最初の物理的な作用には、
①湯の熱による温熱作用
②浮力による作用
③湯の粘性抵抗による作用などがあります。


温泉に入ると「あ~気持ちいい~」と思うのはなぜでしょうか。人間の体温はカエルなどの変温動物と違い、36度前後の一定の体温に保たれています。
人間は活動をするのに酵素などを介してエネルギーやたんぱく質などの必要なものを作り出しています。この酵素などは一定の温度で最も活動できるようになっています。効率のよい活動をするために体温を一定に保っているのです。


風邪をひいて38度くらいに体温が上昇すると大変な疲労を覚えます。39度ではインフルエンザにかかったようになり、40度では熱中症のように意識がなくなるかもしれません。
逆に体内の温度が33度くらいに低くなると、低体温で意識が薄れます。
入浴しているときにも同じことが生じます。ある部分を温めると、他の場所にある血液で冷やそうと、その場所の血管を広げ、血のめぐりをよくします。赤くなるのはそのためです。


血の巡りがよくなると、酸素をたくさん持っている赤血球や栄養が運ばれ、老廃物や痛みを発する物質などが洗い流され、リフレッシュされます。
肩まで入浴すると胸から下が温められるので、汗を額や顔にかくことで体温を下げようとします。下げることが追いつかなくなると、徐々に体温は上がってきます。
日本人の好む41度くらいの湯の温度で15分くらい入浴すると、体温は約1度上昇します。温泉では化学物質などの作用で1.5度くらい上昇することがあります。
この1~1.5度の体温を上昇させるのが健康を維持増進するために必要なことなのです。
人間は非常に高い体温になると熱中症など深刻な問題を引き起こしますが、わずかな体温上昇の場合、ほとんど問題を生じずに元にもどります。
元にもどると次の体温上昇の刺激から身を守ろうと防御体制をつくります。この反応として免疫力を増強したり、たんぱく質の修復機能などを高めたりすることが最近の研究からわかってきました。


血の巡りやたんぱく質の修復機能などがよくなれば、キズなどが治りやすくなります。戦国時代の「信玄の隠し湯」「有馬の秀吉の湯」など傷ついた兵士が温泉でよくなるという説明になります。温泉に行って「あ~気持ちいい」の体験をされてはいかがでしょう。

(国際医療福祉大学大学院リハビリテーション学分野 温泉療法の専門

その2

日本には「美肌の湯」といわれる温泉がたくさんあり、その多くの泉質はアルカリ性単純温泉です。
アルカリ性単純温泉は、炭酸水素ナトリウム (重曹)や炭酸カリウムなどを含むことが多く、pH8前後のアルカリ性を示します。
アルカリ性の泉質は、皮膚表面(角質)のたんぱく質に対して、身体を洗うときに用いる石けんと同じような働きをします。
せっけんは、角質のたんぱく質と結合し、汚れとともに皮膚からはがします。


アルカリ性泉は、石けん作用によって角質のたんぱく質を湯の中に溶かし出します。
これは小学校や中学校などの理科の実験で用いるニンヒドリンという試薬を使った実験で証明することができます。水道水とアルカリ性泉に腕を漬けて比較してみると、アルカリ性泉では明らかに紫色に変色します。紫色の変色は、たんぱく質がアルカリ性泉のなかにたくさん溶かされていることを示しています。
もう一つ、湯そのものも皮膚から油分を奪い去ります。温水で食器を洗うと食器に付着した油分が落とされるのと同じようにです。


誰しもアルカリ性泉に入浴し、皮膚の表面に触れてみると、つるつるしてなめらかになっていることに気がつくことでしょう。
お風呂から出てしばらくたつと、その効果はさらによく感じ、さらさらした肌になって、肌ざわりがよくなります。
アルカリによる作用と湯の作用で、美人になったようなつるつる感が ″美肌の湯″とか″美人の湯″といわれる元になったと思われます。
一方、アルカリ性泉が皮膚を曹っている角質のたんぱく質を取り去ることは、角質のもつ防御機構をなくすことでもあります。


皮膚はすぐに防御機構を取り戻そうとするために新しい皮膚を作り出し、新陳代謝を促します。この新陳代謝作用も美肌をつくることに貢献していると思われます。
注意しなければならないのは、アルカリ性泉は強すぎると、角質を必要以上に溶かしてしまうことです。皮膚をなめらかに覆っている皮脂も、たんぱく質も取り過ぎてしまうと、肌荒れを起こすからです。


お勧めは、アルカリ性の程度がpH7・5~8・5ぐらいで、強い成分の入っていないアルカリ性単純温泉です。
pH8・5以上の強いアルカリ性泉は、肌荒れの原因にもなることかあります。肌の弱い方は入浴時回を少し短めにするか、浴槽から出た後に水道水(湯)で洗い流すとよいでしょう。
アルカリ性泉に入って、あなたもつるつる美肌を手に入れてみませんか。


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