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質美富士(といし山)

しつみふじ  標高 535.9 m


1998年03月13日
  晴れのち曇り、12度  風少々

 瑞穂町と和知町の町界尾根の一峰であるこの山はJR山陰線の下山駅から北西の方角に位置している。
標高は535.9mである。
南麓を東西に流れる質美川(しつみかわ)は南北に流れる由良川に突き当たり合流する。
質美の里の山から「質美富士」とか丹波の中心に位置しているので「丹波富士」とも呼ばれる。 町界尾根は東西に連なっているので、下山駅の方から眺めるとピラミッドの形をした美しい山である。

大福光寺

 この日私は登山の前に隣町である丹波町の大福光寺を訪ねた。
このお寺のある蕨(わらび)の里は下山駅のすぐ東側の高台にある。
桧皮葺の本堂は国の重文に指定されており立派なもの。また本堂の左手にある多宝塔は屋根の修理中であったがこれも国の重文である。
このような建造物を見ていると歴史の重さに感動する。

 蕨の里には茅葺きの民家が数十軒もあったところだが今は建て替えたり、トタンで覆いをしたりしている。往時の姿で現存するただ一軒の家は重文に指定、公開されている。
その民家(渡辺家)の奥様に家の中を案内され、私の生まれ育った家もこんなだったなあと感慨深い思いにひたる。

熊が出る

 「今日は山に登りに来たんです」と話すと「先日、熊が出没して幼稚園で飼育しているうさぎとニワトリが食べられた。そして質美の方へ逃げたので今日は確か山狩りがやられている、気を付けて下さい」とぶっそうなことを言われた。
この高台に来たもう一つの目的は、ここから「質美富士」を眺める絶好の場所であるからです。
(写真はここから撮ったもの)

「といし」は「砥石」のことか?

 二万五千分の一地形図で調べても山頂への道は記されていない。またハイキングの本にも殆ど紹介されていない山であるので登れるかどうか判らなかった。ある人から「といし山」と云うからには「砥石」用の石を今でも掘り出しているのだったら作業員が入山する道が多分あるだろうとのヒントで出かけることにした。
南麓の北久保(下山駅から2kmくらい)からの林道を車で走り、最初に出会った人に「といし山」にはここから登れますか?と聞くと「この林道の終点に駐車できるのでそこから歩きなさい」と云われる。

登山口~石切場~山頂

 林道終点には5、6台の駐車スペースがあり既にXYZビデオなる社名入りの車2台が止めてある。
ここから沢筋に添って道が続いている。15分ほどで左の尾根上から運搬用のロープがひかれている所に着く。そこから少し谷を遡行してみるがすぐ大きな滝と岩にはばまれ人の入った形跡はない。
引き返し左の尾根を目指し雑木をかきわけトラバースすると下からの山道に出会う。
(この道への分岐には気付かなかったので帰りに歩いてみようと思う)
多分これが先ほどのロープの上部への道と見当を付け登る。

 しばらく行くと砥石の原石を掘った跡の残る石切場で数人がビデオの撮影をしている。
「どこへ行くのか?」と厳しい顔で聞いて来る。
「といし山に登るのです」と答えると「山頂はあちらの赤い布で印のついた方に行きなさい。
こちらは立ち入り禁止、爆破の音がするが気にしないで」と云われ、さらに加えて「熊に気を付けて」と念を押される」。

 左の尾根への目印に木の枝に赤い布が巻かれているが道はない。
ものすごく急な坂だし、笹やブッシュをかきわけなければならない。
急登急登を木や根っこをつかみよじ登り尾根筋へ向かう。尾根は左右とも落葉樹で葉のない今の時期は明るくて気持ち良いし道はなくとも岩尾根の所もあり楽しい。
この岩場は展望もよくしばし休憩。頂上に近づくにつれ傾斜はきつくなる。
息をきらし、汗を拭いながらも時折聞こえる小鳥達のさえずりに耳を澄ます。

登山口を10時15分に出発し頂上に11時10分に着く。
木々が伸びていてあまり展望は良くないが葉がないので北以外は木枝越しに見晴らせる。
北東に丹波の名峰「長老ガ岳」が見える。
 登頂の満足感を15分くらい味わい下山を始める。
登りはゆっくりとしか歩けないが下りは早い。登山口から石切場まではしっかりした道があるので下りではその道をトレースすると沢を詰める少し手前にその道は合流した。
この分岐は細くて登るときには見つけられなかったものだ、残念。

 約25分で林道終点に到着。

「この山は 登るより見る 山なり」

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